スイッチング電源の歴史は高周波化の歴史でもあります。スイッチング周波数を高くすることでインダクタやコンデンサに小さなものが使え、全体を小型化できます。
出力が数百mAクラスの降圧型コンバータの場合、スイッチング周波数は3MHz程度まで進んでいましたが、6MHzのスイッチングICまで発売されています。これはポータブル機器への搭載を意識し、実装面積の大幅な縮小が可能ですが、6MHz のスイッチング周波数は小型化だけが理由ではありません。
スイッチング電源の応答特性を決める主な要素はインダクタの値と負帰還ループの周波数特性です。非絶縁型のスイッチング電源ではインダクタを通して電流を供給するので、出力の電流応答はインダクタの値で決定されます。インダクタンスL、入出力電圧V、瞬間的な電流I、時間tとすれば
I=t*V/L
が成り立ち、電流はV/L の傾きで直線的に上昇します。これを超える電流は原理的に得られないわけで、負荷の急変などで電流が足らない場合、出力コンデンサの容量を大きくして補うことになります。これは今後も使われていくはずで、この点は従来と何も変わりません。
この式から、入出力間電圧Vが大きいほど、またインダクタンスが小さいほど高速な応答が得られることになります。具体的にはV=1V、インダクタ=1μHのとき1A/μsということになり、従来の電源では数μH程度のインダクタが使用されています。入出力間電圧が 0.5V 程度まで小さくなると、インダクタンスも 0.47μH など従来よりも小さくしなければ高速な応答は得られないことになります。
単にインダクタンスを小さくするだけではリップルが増えてしまうので、スイッチング周波数を高くする必要があります。結果として、出力電流が数百 mA で入出力間電圧が 0.5V と小さい場合には、高速な応答を得るために少なくとも 5MHz 以上の高速スイッチングが必要になる、というわけです。リップル周波数が高くなると、コンデンサもある程度小型の物が使えるようになります。
通常のレギュレータでは出力をフィードバックしスイッチングのタイミングを制御しているので、系全体の応答性は負帰還の帯域幅に支配されます。一般にループ帯域幅はスイッチング周波数の 20 %程度に抑えられます。スイッチング周波数が1MHzを超える場合、微分スイッチによるフィードフォワード制御などによる応答の補償なども採られていましたが、5MHz 以上のスイッチング速度に見合った広帯域の帰還を実現しようとすると、消費電力の大きな超広帯域の誤差アンプが必要となるほか、安定したループ特性を得るのも難しくなります。古典的な負帰還制御のみによる電源は 3MHz程度までが実用範囲です。
このためDSPの高速処理、プログラマビリティ、多機能性などを活用して制御を行っています。特にマルチフェーズの制御、様々な保護機能、I2Cなどの通信機能、複数電源の同期など、様々な要件に対応するにはDSPによる高速・集約的な制御が必要になっています。